SABICと蘭アムステルダム自由大学 太陽熱利用技術で産学共同事業を開始

アムステルダム自由大学の屋上に設置された試験用パネル (写真: VU University Amsterdam (VU), PR208)[東京]  2012年7月5日 –  SABICと蘭アムステルダム自由(VU)大学は、太陽熱集熱装置に向けてVU大学が発明した温度制御技術のさらなる開発と商業化を目的とした世界的独占契約を結び産学共同事業を開始する。これにより、将来、軽量かつ高効率で低価格な太陽熱集熱パネルの利用が可能となる。

過去数十年の間に欧州のエネルギー市場は多様化が進み、太陽エネルギーは多くの家庭にとってクリーンエネルギーの重要な供給源となっている。2011年の終わりまでに、欧州全域で50ギガワットの太陽光発電システムと26ギガワットの太陽熱利用システムが設置されており、これは1500万世帯以上の家庭に電気を供給すると共に、平均的な規模の太陽熱利用システムを保有する1250万世帯の家庭が自家給湯を実現するのに十分な能力である1。太陽エネルギーの需要が高まる中、SABICとVU大学は、太陽光を利用して熱を収集する新たな高効率の太陽熱技術を開発するため共同事業を開始する。太陽光からのエネルギーは太陽熱集熱装置内で高熱を発生し、ほとんどの場合プラスチック材料の融点を超える温度にまで達する。このため、これまで集熱装置は高コストな金属やガラス材料で製造されてきたが、これらの材料は重いだけでなく設計自由度において制約があった。VU大学が考案し特許登録された技術は、パネルが過熱する前に太陽光が反射されるよう、SABICのLexan*ポリカーボネートシートを用いた熱可塑性樹脂パネルにプリズム構造を持たせた「光学スイッチ」を利用するというものである。

アムステルダム自由大学の屋上に設置された試験用パネル (写真: VU University Amsterdam (VU), PR208)VU大学物理学部のロナルド・グリーセン教授とマーティン・スラマン研究技師は、温水式の太陽熱集熱装置が抱えていた過熱の問題に対する解決策を模索していた際、幾何学的な表面構造を利用して温度を制御するアイデアを思い付いた。VU大学の技術移転部門は産業パートナーの選定に当たり、最先端技術で80年の歴史を持ち熱可塑性エンプラ材料の世界的リーディングメーカーであるSABICが、産学協同事業の理想的なパートナーであるとの結論に達した。

ロナルド・グリーセン教授は「今回の産学共同事業に関する合意は、この新技術の開発における新たな一歩となります。将来、太陽熱集熱装置やその他の応用技術製品の生産方法に大変革をもたらすかもしれません。SABICの協力によって、本プロジェクトの成果はさらに確実なものとなることでしょう。」と語っている。

またSABICのイノベーティブプラスチック事業で応用技術リーダーを務めるエリー・バーガウトは「太陽熱エネルギーは、世界で最も有望かつダイナミックなエネルギー分野の一つで、さらに成長を続けています。この発明は、お客様に新しく実用的なソリューションを提供するための道を切り開くものとなります。熱可塑性エンプラの利用によって、さらに効果的で実用的かつ手頃な価格で手に入れられる太陽熱エネルギーシステムの実現をサポートできることは大変大きな喜びです。」と述べている。

太陽熱集熱装置の基材として利用されるLexan*ポリカーボネートは、その軽量性に加え金属代替による部品の統合化、メンテナンス頻度の低減化や設置の簡略化などによって大幅なコスト効率の向上に貢献するなど、顧客にとって使い勝手の良い材料である。また本技術は温室に適用することも可能である。

VU大学およびVU医療センターの技術移転部門マネージャーであるスティーブン・タン氏は「地球に優しい技術に関する実用的で有用なアイデアが、基礎科学研究の現場で着想されたことは大変素晴らしいことです。SABICがこの技術に取り組み、商業的成功にまで開発を導いてくれることを大変嬉しく思います。」とコメントしている。

この技術コンセプトは2009年にオランダ北ホラント州からエウレカ気象賞を授与されており、蘭FOM(物質基礎研究学会)とのさらなる共同開発に向けた資金調達に寄与した。

 

R SABICの登録商標
1 2012年5月11日に開催されたヨーロッパ・ソーラー・デイズ・イベントにおける、欧州太陽光発電産業協会(ESTIF)および欧州産業連盟(EPIA)のプレスリリースによる。

 


アムステルダム自由大学(VU)について

アムステルダム自由大学1880年に設立されている。VUとはオランダ語で「自由大学」を表す「Vrije Universiteit」の略であり、ここでいう「自由」とは国家や教会からの干渉を受けないという意味である。1880年の設立以来、アムステルダム自由大学は知識に対する独自の姿勢で知られてきた。VUはオープンな組織であり、人々や地域社会との強いつながりを持っている。重要とされるのは単に知識の深さではなく、幅広い知識を身につけることにある。同大学の学生、研究者、博士号候補者やスタッフには、より遠くを見つめる姿勢が求められており、これは自分の興味や得意分野を超えた視点で物事を見る、親しみのある事柄そして現在この地点よりもさらに先を見据えるということである。

同大学は過去一世紀にわたって拡大を続けており、現在は12の学部を擁し、26,000人の学生に対応できる教育施設を持つに至っている。

VUのキャンパスと大学病院は、オランダで最も躍動的で急成長を見せている商業地域の一つである、アムステルダムの南西に位置している。アムステルダム自由大学は、50以上の学部(学士)課程と、約100の大学院(修士)課程を持ち、学習環境面で幅広い選択肢を提供している。これらの課程は質が高く、環境は学習に適しており、教員とのコンタクトも容易である。