日精樹脂工業株式会社(本社:長野県埴科郡坂城町、代表取締役社長:依田穂積)は、ドイツ・アーヘン工科大学IKV(Kunststoff Verarbeitung研究所)と連携し、プラスチックの環境循環(リサイクル)をテーマとした共同研究を2025年11月より開始します。研究開始に先立ち、10月8日から開催されるK2025(ドイツ・デュッセルドルフ)において、共同研究の骨子となる実演を行い、環境価値を備えた成形技術として、その社会的意義と将来への可能性を、ドイツをはじめとする国際市場に向けて積極的に発信します。
本研究は、当社が推進するESG経営およびTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づく気候変動対応戦略の一環として、環境負荷の低減とSDGs(持続可能な社会の構築)、そしてこれまでの使い捨て型のリニアエコノミー(作る→使う→捨てる)に代わる、使用済みプラスチックを資源として循環させるサーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現に貢献する技術開発を目的としています。
これまで日精樹脂工業は、「プラスチックのサステナビリティを追求し、環境負荷の小さい循環社会の確立に寄与する」という理念のもと、環境対応樹脂PLA(ポリ乳酸)などのバイオ樹脂の活用や、廃プラスチックのリサイクル成形技術に関する研究を継続的に推進してきました。射出成形機の専業メーカーとして培った豊富な経験と知見を活かし、プラスチックの資源としての有用性を社会に発信・啓蒙するとともに、将来を見据えた環境技術の開発に取り組んでいます。
今回の共同研究では、リサイクル樹脂の高精度成形技術の確立、成形工程におけるエネルギー使用量の最適化、AIによる不良品排出の最小化など、製造プロセス全体の脱炭素化と資源循環の高度化を目指します。これらの取り組みは、SBT(Science Based Targets)に準拠した温室効果ガス排出削減目標の達成にも直結するものです。
また、環境意識の高い欧州の中でも、特に環境技術研究が盛んなドイツとの連携は、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを加速させる重要な選択です。今回の国際共同研究は、持続可能なものづくりの未来を切り拓く重要なステップであり、環境課題の解決に向けた企業の姿勢を明確に示すことで、環境に関心を持つ投資家やステークホルダーとの信頼関係を強化してまいります。
このたび共同で研究を進めるIKVは、産業界や研究機関と連携し、プラスチックの持続可能な利活用と環境負荷低減に向けた先進的な研究を推進する世界有数の研究機関です。今回の共同研究は、日精樹脂工業の成形機をベースに、欧州金型メーカーや制御機器メーカーとの協業も視野に入れています。持続可能な産業成長とSDGsの実現に貢献する、具体的な一歩となるものです。両社は以下4点を主なテーマとして共同研究に取り組みます。
1. リサイクル成形技術の基盤確立
リサイクル樹脂の利用が進んでいない分野、特に医療・食品分野における安全性・品質・材料特性を研究。
2. リサイクル樹脂を用いたサンドイッチ成形技術の確立
リサイクル樹脂の材料特性を生かした効率的な成形工法や金型技術を研究
3. リサイクル樹脂の特性把握による適用分野の拡大とリサイクル率の向上
リサイクル樹脂の適用業種拡大と資源としての活用率向上(リサイクル率アップ)を目的とし、リサイクルにおける材料劣化、循環限度や親和性などに関わる物性・特性を研究。
4. AI技術を使った良否判定と条件最適化に関する技術の確立
生産工程で生じる不良品自体をなくし、生産効率向上と不良品排出ゼロ化を目指して、AI画像判定及びAI条件補正技術を研究
研究開始にあたり日精樹脂工業は、2025年10月にグループ会社であるイタリアNEGRI BOSSI(ネグリ・ボッシ)の電気式射出成形機「NOVA5e180T」およびリサイクル研究用周辺装置をIKV研究ラボに設置します。同成形機は、日精樹脂工業の電気式射出成形機をベースに欧州専用設計を施した型締力180トンのモデルで、リサイクル材を用いたサンドイッチ成形を可能とするホットランナ・バルブゲートシステムを搭載しています。
今後、日精樹脂工業は、IKVが蓄積する環境技術の知見と、当社が長年培ってきた“成形の理(ことわり)”を融合し、環境経済を形成する方法を多視点で研究してまいります。また、本共同研究の成果は、今後の製品開発や日精樹脂工業のプライベート展や国内外展示会を通じて発表していく予定です。
